- 開催日
- 2022年8月29日
- 利用者
- 一般財団法人 福島県電源地域振興財団ふたば復興支所
- 内容
- 双葉郡の自然を満喫できるアクティビティ体験と震災からの学びを取り入れた2泊3日の東京発着のバスツアー
- 目的
- 首都圏の大学生等を対象に、双葉郡の魅力を感じてファンになってもらい、地元の方と継続した繋がりを創出する
- 場所
- 南相馬市、双葉町、浪江町、富岡町、楢葉町、広野町
- 規模
- 参加者15名
一般財団法人 福島県電源地域振興財団ふたば復興支所様では、ふたば地域の関係人口の創出に資する事業を推進しており、首都圏の若者を対象とした事業を創設されました。
それに対し弊社が提案した企画が採択され、バスツアー業務を受託。2泊3日の「ふたばの自然満喫ツアー」を実施しました。
若い感性や柔軟な発想を地域の振興に生かすべく、主に首都圏の大学生を対象に募集しました。
豊かな自然を満喫できるアクティビティ体験を取り入れ、エリアの資源である「自然」をテーマにした関係人口創出アイデイアを学生自身が考えるワークショップも実施。一方、震災からの復興等の学びに触れるコンテンツも盛り込みました。
DAY1:浜通りの恵みを「感じる」夏野菜の収穫体験&農園BBQ 伝承館見学や地元住民との対話から「学ぶ」
ツアーには首都圏の学生15名が参加。東京駅から弊社の貸切バスに乗り込み、まずは南相馬市の「ごろくファーム」に到着しました。
「ごろくファーム」では米を中心に、四季を通して様々な野菜を栽培しています。そこで、自分たちがランチで食べる野菜を収穫するところからスタート。
4班に分かれて「きゅうりを20本」「トマトを15個」といったように、それぞれに与えられたミッションに沿って収穫をしました。
この日のランチは農園の作業小屋の一角をお借りして、バーベキューの達人、浜通りに隣接する田村市の川合精肉店さんによる「LIVE BBQ」で本格的なバーベキューを満喫。
自分たちで収穫した野菜や大きな塊肉、自分の好みの具材で作った串焼きなどが次々と提供され、初対面の学生たちが自然と打ち解けていきます。浜通りの恵みを五感で楽しみ味わう時間となりました。
ランチの後は、福島イノベーション・コースト構想の新たな施設などを車窓から眺めながら、浜街道をバスで南下。
双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館、浪江町の津波で被災した沿岸部や帰還困難区域のリアルな情景を見ることにより、震災から今までの被災地の歩みなど光と影を感じました。
また、夕食後は浪江駅前の「Bar幸」へ。
避難指示の解除後、住民が1000人以下となった浪江町でBarを始めた少し先輩世代の山本幸輝さんのこれまでの日々とこれからの想いについて、耳を傾けました。
DAY2:ふたばの海を「楽しむ」SUPと釣り体験 魚の放射能測定や福島の海や環境の専門家の話から「学ぶ」
2日目の午前中は富岡漁港でSUPと釣りの二つのマリンアクティビティで楽しんでいただきました。
SUPのインストラクターは、故郷の海でSUP体験を再開し、ふたばの海の魅力を発信する白土栄一さん。釣りのインストラクターは遊漁船・長栄丸の石井宏和船長にお願いしました。
悪天候にも関わらず、学生たちは美しい富岡の海と磯を全身で楽しんでいました。
アクティビティの後は福島の海や環境についての座学。
国立環境研究所福島地域協働研究拠点の林先生をお招きして森林や川の視点から、そしてアクアマリンふくしまの富原獣医には海の視点から、原発事故から現在に至る環境の変化をお話いただきました。
ふたばの海で思い切り楽しんだ後だけに、話の理解度がさらに深まります。学生たちが少しずつ、この地域のことを「自分ごと」として考えはじめた意識の変化がみられた時間でした。
その後、釣りチームが釣った魚は、富岡町の食品検査所に持ち込んで、みんなで放射線量を測ってみました。この検査所は、住民の方がいつでも食品を持ち込んで線量を測定できる施設です。
10分後に出た結果は「ND(検出下限値以外)」でした。こうした体験を通じて福島の現状への正しい理解に繋がればと願います。
この日の夕食を終えて学生たちを岩沢海水浴場へ連れ出しました。この海水浴場は日中にアクティビティを行った富岡漁港同様に、かねてからサーフィンのメッカでもあり、この夏12年ぶりに海開きが行われました。
小雨の中、霧に包まれながらライトアップされた広野火力発電所が幻想的に浮かび上がります。学生たちは大喜びで、しばらく写真撮影会となりました。
DAY3:Jヴィレッジでの宿泊と「振り返り」のワークショップ
2日間の体験を通して感じたことを言語化し、行動につなげる一歩へ
2日目の宿泊先は楢葉町のJヴィレッジ。
かつてここが福島第1原発復旧作業の最前線だったこと、遡れば電源地域への地域振興策として建設された経緯があることなど、華やかな佇まいの裏側にも向き合いました。
最終日はそのJヴィレッジの会議室をお借りして、2日間の振り返りのためのワークショップ。
グループごとに体験を振り返り「ふたば地域に若い人たちを呼ぶアイデア」をディスカッションしました。短時間のワークながらも、この地域特有の課題にも切り込む、すばらしいアイデアがたくさん提案されました。
東京までの帰りのバスは爆睡…ともならず、ひとりひとりマイクを取り、このツアー前後での意識の変化や、縁あって集まった15人の仲間との出会いなど、熱い想いが共有されました。
「このツアーで、農家さんをはじめ地元の方たちがとても喜んでくださったのが印象的だった。私たちの方がたくさんのおもてなしや恩恵を与えていただいたのに。今回出会った仲間たちの縁を大切に、自分も福島に何かかかわってみたいと思った」
「光と影が交差する現在地。それをどう乗り越えて進んでいくか、福島県出身でも県外の人たちと交流をして改めて自分の地元の魅力に気付き、誇らしい気持ちになった」
「コロナでオンライン授業も多い中で、現場で感じることの大切さに気付かされた。最終日のワークを通して地域を盛り上げていくための議論は楽しい!と感じられたので、この経験が自分の未来につながった気がする」
福島での夏の原体験と、地元の皆さんとの出会いから、自分が将来やりたいこと、実行したいことを描くことにもつながったようです。それぞれの学生にとって、この福島がサードプレイスのように大切な場所になったツアーとなりました。